Tea Beauty

お茶美人

なでしこ力アップ!お茶美人

第五回 急須のうんちく話 Date:'17.08.01 文責/Meikö


今回は急須のお話です。



日本でお茶が多くの人々に飲まれるようになったのは、いつからだと思いますか?
奈良時代? 平安時代?
多くの方が古代を挙げますが、答えは中世、鎌倉時代からです。
今の様に急須で茶葉を淹れるのではなく、抹茶を点てていました。
その頃の飲み方は接待として……
とても手間がかかるものでした。
客人が来ると抹茶の原料、碾茶(てんちゃ)を30分以上もかけ臼でひいたそうです。



やがて安土・桃山時代。
ある茶人が抹茶をひくのが面倒と、
お酒の燗づけ用の陶器に碾茶とお湯を入れてみたら、これが美味しく飲めました。
それを工夫改良し、現在の急須の原形が出来上がったとか。

急須には陶器(原料が土)、磁器(原料が岩石)、ガラスの3種類があります。
お茶の味を重視するなら、お薦めは陶器製。
陶器の急須で淹れると、旨味成分のアミノ酸は減ることなく、
渋味成分のタンニンは陶器に吸収され減少するという報告があります。
つまり旨味があるのに まろやかな味になるのです。



急須の網の種類は色々ありますが、カゴ型で取り外しできるものは、
茶葉の始末は楽ですが、お茶の美味しさを引き出すとなると いまいちです。
お茶によっては目詰まりする網も。そんな時には、
帯網といって急須の側面にぐるりと網の貼られている急須を選んでください。
とても美味しく淹れられます。



急須のフタを割ってしまい、フタだけ欲しいという声をよく耳にします。
急須はぴったりフタと本体が合わさり密封性の高いことが良い急須の条件。
ひとつひとつ本体とフタの“すり合わせ”をして作り上げます。
ですから、フタだけ買うことができないのです。

新しい急須の注ぎ口にはビニールのカバーがついています。
これは運ぶ間に割らないためのもの。
保護する目的で、そのままビニールをつけて使用している方がいますが、
衛生的に好ましくないので、ビニールは外してご使用ください。

急須を使って上手にお茶が淹れられますか?
次回は、美味しいお茶の淹れ方を伝授いたしましょう。

第四回 新茶です! Date:'17.04.02 文責/Meikö


四季それぞれの旬。
「新」でなければ味わえない美味しさがあります。
新米 新じゃが 新筍 新生姜・・・
そして、新茶!


ぜひ新茶を急須でお飲みください。
少し冷ましたお湯でゆっくりと淹れてみてください。
新茶だけが味わえる繊細な香り、優しい味わいに心まで満たされることでしょう。

緑茶の香りの成分は多く200種類以上あります。
その中で新茶の香りは「青葉アルコール」という成分が醸しています。
この成分は名の通り緑の葉に含まれ、疲労回復・ストレスの緩和・記憶力向上などの効果があるそうです。

新茶を飲むと甘味の余韻を感じます。
新茶には「テアニン」というアミノ酸の一種の旨味成分が多いからです。
お茶の樹は冬の寒さに耐えるため冬眠し養分を蓄えます。
春、その養分テアニンをたっぷり含んだ新芽が芽吹きます。
テアニンにも青葉アルコールと同様リラックス効果、記憶・集中力を高める効果があります。
新茶は香りと味、両方から人を癒し元気にさせてくれるのです。

同じ新茶でも、
・芽吹いたばかりの柔らかな芽(静岡ではミル芽と呼びます)を摘んだ初摘み茶
・夏も近づく…と唄われている八十八夜摘み茶
摘む時期、産地、品種により色々な新茶があります。

さて、新茶を急須で淹れた時、ホコリの様な物が浮かんでいることに気づいたことはありますか?

このホコリの様な物、毛茸(もうじ)或いは白毛(はくもう)と言って新芽だけに生えている産毛なのです。
生まれたての赤ちゃんに産毛があるように、お茶の新芽も芽吹いた時は産毛に包まれています。


やがて、その芽は小さな葉に開き、お日様の恵みをもらいます。
陽が当たると葉の表側は産毛が抜けますが、裏側には産毛が残っています。
その葉を摘んでお茶に仕上げると、葉は内側に丸まり、外側には産毛が残ったまま。


その葉を淹れると、産毛がホコリの様に茶碗に浮くのです。
萌芽してほんの数日の間に摘んだ葉のみの現象です。
だから、ホコリの様な物が浮いた時には、貴重な若芽の新茶の証拠なのです。
この繊細な初摘み新茶は、ぬるめのお湯で淹れると美味しさが引き出されます。

八十八夜を過ぎた頃になると、少し成長した葉は、より光に当たろうと反ってきます。
この葉をお茶に仕上げると、葉は外側に丸まり産毛は中に隠れてしまいます。


そうなると、お茶を淹れても産毛はあまり浮きません。
繊細さの代わりに、この時期のお茶には熟した旨味があります。
その旨味に合うように、少し熱めのお湯で淹れ、香りを際立たせてください。

新茶の香りもビタミンCも、残念ながら時間の経過と共に失われてしまいます。
新茶は、できるだけ早めにお飲みください。
そして、旬だけが味わえる幸せを新茶と共にお楽しみくださいませ。


第三回 年の瀬・年の初めもお茶と共に Date:'16.12.18 文責/Meikö


今年はいつまでも暑くて、秋の紅葉を楽しみ始めたら、はや師走。
忘年会のシーズンがやってきました。
ついつい飲みすぎて、二日酔いということも……

二日酔いは、どうして起こるのでしょう?
お酒を飲むと、アルコールは肝臓で「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。
さらに、酢酸になり、やがては水と二酸化炭素に分解されます。
ところがアルコールの量が肝臓の処理能力を超えると、「アセトアルデヒド」のまま体内に残ってしまい、様々な二日酔いの症状を引き起こすのです。



そんな時には救世主!お酒を飲んだら緑茶もぜひお飲みください。
緑茶に含まれるカフェインとビタミンCがこのアセトアルデヒドの分解を助けてくれます。
焼酎をお茶で割る‘お茶割り’もおすすめです。

お茶を飲むと眠れなくなるという方は、翌朝に飲んでも大丈夫。
二日酔いの症状を早く改善してくれます。
緑茶は二日酔いの薬として鎌倉時代から使われていました。
第3代征夷大将軍、源実朝が二日酔いに苦しんだ時、栄西禅師(臨済宗の開祖)が一杯のお茶を奉げたそうです。

さて、年が明けたら「大福茶(おおぶくちゃ)」。
元旦に飲むおめでたいお茶のことです。
これといった決まりはありませんが、緑茶に梅干しと昆布を入れて飲むことが多いようです。黒豆を入れる処もあります。
大福茶の歴史は古く、平安時代。
村上天皇の治世、はやり病に人々が苦しみました。
名僧空也はお茶に結び昆布と梅干しを入れ、観音様に備えました。
それを飲んだ多くの病人が元気になったことから、村上天皇は元旦に縁起のよい飲み物として、このお茶を飲まれるようなったと伝えられています。

お正月には大福茶をアレンジ、大福茶雑煮を作ってみては、いかがでしょう。
作り方はお雑煮よりも簡単。



用意するものは、梅干し(種を取り軽く包丁でたたいておく)、とろろ昆布、カツオ節、お餅(焼くかレンジでチンしておく)。
とろろ昆布とカツオ節は多めの方が美味しいです。
とろろ昆布がなければ梅昆布茶でも代用可。
お煮しめの昆布や黒豆、葉物があれば加えてください。
お椀に材料を全て入れお醤油をたらします。
熱いお湯でさっと淹れたお茶を注ぎます。
あっという間の大福茶雑煮の出来上がり。
1年の無病息災を祈りながら、お試しあれ。



年の瀬、年初めもお茶と共にお楽しみくださいませ。

第二回 水出し緑茶 あれこれ Date:'16.11.14 文責/Meikö


前回は本物の緑茶の味を楽しむ方法として、水出し緑茶を紹介しました。


実は、水出し茶って良いことづくめなのです。お湯で淹れるのと比べて

1、 渋みが少なく、旨味が多く感じられる
2、 美味しさや美しい水色が続く
3、 カフェインが少ない
4、 水出しだからこそ摂れる栄養成分「エピガロカテキン」がある

エピガロカテキン・・・?
詳しく説明しましょう。
名前の通りカテキンの一種で強い抗酸化作用があります。免疫細胞を活性化させ、風邪をひきにくくします。
コレステロールの軽減、肥満にも効くと言われているすごい成分です。

血糖が気になる時には、ぜひ番茶を水出しにしてください。
「ポリサッカライド」という血糖値の上昇を抑えてくれる物質が多く含まれるそうです。

最近では水出し茶用の便利な容器が色々販売されています。
注ぎ口が茶こしになっていて、ボトルにお茶の葉と水を入れるだけ。前回お伝えした紙パックを使うより、さらに美味しいお茶ができます。 フィルターインボトルとかティーポットボトルという名前で売られています。携帯用もあります。




水出し茶をもっと極めたいとおっしゃる方には、とっておきの方法を!
氷出し茶…茶葉に直接氷を入れてしまうのです。
お茶を出す水は冷たければ冷たいほど、旨味が増します。
だから氷。
せっかくですので、上級の煎茶を用意してください。


タッパー(匂いのついていない物)にお茶10g(大さじ1杯)を敷き詰め、その上に氷250gをのせてください。
匂いが移らないよう しっかりフタを閉め、冷蔵庫でゆっくりゆっくり時間を置きます。
氷が徐々に溶け、その1滴1滴にお茶の成分が染み出します。
氷が溶けるまで待つこと2~3日。ようやく完成です。茶こしで漉してお飲みください。
きっと その美味しさに驚くはず。
まさに甘露。
甘く、旨味の余韻が残ります。
100g1000円ぐらいのお茶なら玉露の味わいになってしまうのです。

さて、水出し茶に合うお菓子、モンブランのレシピをご紹介しましょう。
かつて、昭和天皇が大好物でいらっしゃったモンブランがありました。皇室では健康上の観点から、あまりお代わりをされる事がないそうですが、
このモンブランだけは例外で「もう1つよろしいですか?」とご所望されたそうです。
そのモンブランのレシピを作りやすいようにアレンジしました。


生栗 300g
牛乳
バター 20g
砂糖 40g

1、栗の皮をむき、かぶるくらいの牛乳を鍋に入れ、弱火でゆっくり柔らかくなるまで煮る
2、栗を取り出し、熱いうちに粗くつぶして冷ます。
3、室温に戻したバターに砂糖を入れ、ホイッパーなどで擦り混ぜる。
4、バターに栗を混ぜ、お好みでバニラビーンズやブランデー、ラム酒で香りづけ。
5、ラップで茶巾絞りにして形を整える。

さぁ、お茶と共に贅沢なひとときをお楽しみくださいませ。

第一回 本物の緑茶の味をご存じですか? Date:'16.10.30 文責/Meikö


あなたのお茶のスタイルは…
ペットボトルのお手軽派?
それとも
急須で淹れる本格派?

最近のペットボトルのお茶の進化は目を見張るほどです。
種々多様、玉露入り、にごり入り、春には限定の新茶まで並びます。
原料には国産の茶葉が使われるなど安全性も高くなりました。

では、
丁寧に急須で淹れたお茶の美味しさをご存じでしょうか?
美しい色あい、清澄な香り、甘く濃厚な味わい、のどごしの爽やかさ!
これほど贅沢な飲み物が日本にあること。もう一度見直してみて良いのではないでしょうか?


ペットボトルでは、この本物のお茶の味を楽しむことができません。
理由は2つ。
1つはビタミンCの添加。お茶はお湯で淹れるとすぐに酸化、傷んでしまいます。水筒に入れたお茶が変色し まずくなってしまうのも、そのせいです。
お茶の味や香りは繊細なもの。酸化防止剤のビタミンCが、お茶の美味しさを半減させてしまうのです。
そのため、高い茶葉を使っても安い茶葉でも味に大差がつきません。

もう1つの理由は茶葉の量。ペットボトルのお茶には色々な経費がかかり、茶葉は急須で淹れる1/4量ほどしか使われていないそうです。

1本150円のペットボトルの内、茶葉の代金はわずか数円とか。
美味しさだけでなく、栄養面でも差が出ます。急須で淹れたお茶は、カテキン、アミノ酸など体にいい成分が数倍多いという発表があります。
とは言っても、急須を用意して、お湯を沸かし少し湯冷ましして、時間をかけて淹れた後はお片付け。
面倒ですよね。

そこで一つ提案です。
本物の緑茶の味を簡単に楽しんでみませんか?


用意するもの
・フタつきのボトル
・少し贅沢な良いお茶の葉
・水(浄水が理想です。少なくとも水道の塩素は抜きましょう)
・お茶やダシを入れる紙パック
(100均に100枚入りが売ってます)
紙パックにお茶を小さじ2杯詰めた物を2つ作り、ボトルに入れる。
水500㏄を注ぎ、匂いが移らないようフタをしっかり閉め、冷蔵庫で寝かす。


1日以上経ったらお茶パックを取り出し、含んだ液を絞り戻してください。美しいお茶の色になります。
本物の味の水出し茶の出来上がり。

熱いお茶がよければ温めてください。
茶葉の種類によっては味が薄い場合もあります。茶の量か時間を増やしてください。
この水出し茶、いくらでできると思いますか?
100g1000円のちょっと贅沢なお茶を使ってもパック代を入れ10円ほど。
ペットボトルなら150円。

こうして淹れた まろやかなお茶には、優しい味のお菓子がよく合います。今の時期なら栗。


さぁ、お茶と共に素敵なひとときをお楽しみくださいませ。
次回は水出し茶のお話と、昭和天皇が大好物でいらっしゃったモンブランのレシピを家庭で作りやすくアレンジしてお伝え致します。